“ゆっくりウェブ”へようこそ!
“ゆっくりウェブ”は、文化人類学者であり環境運動家であり、ブラブリストでもある辻信一さんの著書『ナマケモノ教授のぶらぶら人類学』の発刊を機に開設を思い立ち、文字通り、ゆっくりとスタートしたウェブサイトです。
辻さんと言えば「スロー」な人。「スロー」とはゆっくりという意味ですが、「エコロジカル」や「サステナブル」、「つながり」などの意味を含む言葉です。
それは、しあわせな社会をつくるための概念であり、いまを生きる気づきであり、物質主義社会への戒めのマントラでもある、とにかく地球を愛するすべての人に大切にしてもらいたいキーワードなのです。
「スロー」という言葉は、2001年に出版された辻さんの代表作『スロー・イズ・ビューティフル 遅さとしての文化』(平凡社)で紹介されました。
「人間本来の持つゆったりとした時間を取り戻し、遅恵を養い、文化をつくろう!」、この呼びかけに多くの人々が反応し、全国各地にスローな種は蒔かれ、根を張り、着実に育ってきました。しかしその一方で、社会全体はますます忙しくなり、疲弊してるじゃあありませんか!
「スロー」な思想は、時を経て、ますます重要性を増しているのです。その証拠に辻さん自身も忙しくなっている。むむむ。
人間の限りない欲望によって物質文明は加速し、地球上のあらゆる生態系を危機に追い込んでいます。それでもなお、国民の多くは「もっと景気をよくしてほしい」と政府に求めています。本当の景気とは経済的・物質的豊かさではなく、その対極にあるもの―きれいな水や空気、豊かな山川草木、人々のいきいきとした会話、美しい芸術作品などなど、この世界が与えてくれる景色や気色のすべてではないでしょうか。そのことを、経文のように唱えていかなければなりません。
このゆっくりウェブでは、この世界をぶらぶらするなかで出会う人々の魅力的な表情やハッとさせられる美しい風景、心に響く言葉などを、言葉や写真、イラスト、映像を用いて表現し、お福分けできればと思っています。
また、この世に不幸や災いをもたらす不可解なおかしなことに対しては、批判せず、拳を振り上げず、正しさを主張せず、目の前がパッと明るくなるおかしみのあるヤジを飛ばしていきます。
このウェブサイトのトップページには、白いスペース、無駄な間をつくっています。時間、空間…、わたしたちの人生にはいつも「間」がつきまとっていますよね。ヒマになると「間が持たないなぁ」なんて、ついつぶやいてしまうものです。
亡くなった落語家の立川談志さんは、「人生は死ぬまでのヒマつぶし」、「退屈を紛らわすために余計なことをするのが人間の業」と言いました。人生とは、間を埋めていくことであり、間をつくることなのかもしれません。わたしたちは間を埋め、間をつくる―人間なんですから。
絶望の淵にあっても美しいものを、大きな喜びを、希望を与えてくれるこの世界にいられることに感謝して、間を、人生を、ゆっくりと歩き、ゆっくりと眺め、ゆっくりと遊ぶ…、わたしたちの業につながっていただき、愉しんでもらえたら幸いです。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
“ゆっくりウェブ”の大家ならぬ小家 上野宗則