常世の舟を漕ぎて 熟成版
発売日:2020/3/31 価 格:¥2300(税別) 1953年、水俣湾周辺で、魚が海に浮かび、海鳥やネコの変死が続いた。化学品製造会社チッソが起こした公害の原点、水俣病によるものだった。同年、水俣北部の漁師町に、緒方正人は生まれた。6歳の時、父が突然水俣病で死去、一族もみな発症した。漁師を継ぎながら、父の仇を討つかのように、チッソや行政に対する補償運動、責任追及闘争に没入していく正人。しかし、ある体験をきっかけに、それまでの補償を求める闘いから身を引く。以来、自らも文明社会における加害者であることを認め、それまでとはまったく違う行動を起こすのだった――。この正人の行動に共鳴した辻信一は、そこに至った道を明らかにするため、正人の生い立ちを、想いを辿る。 (本書は、『常世の舟を漕ぎて 水俣病私史』(世織書房)1996、『週刊金曜日』316号・特集「水俣病事件からの光」2000、『Rowing the Eternal Sea: The Story of a Minamata Fisherman』(Rowman & Littlefield)2001、の原稿を再編集、そして、2018年、2020年の聞き書きを増補、熟成版として刊行した) 水俣病の問題をやっていると、病気の問題だっていうこともあるし、それ以上にね、いのちの問題でしょ。…中略…魚も鳥も猫も、他の多くの生きものたちも巻き込んでるわけですよ。 緒方正人 本書より この二十数年とは、世界の危機がぼくの想像をはるかに超えるペースで深まりゆく月日だったが、それは同時に、緒方正人の思想が着々と深まり熟成していく日々でもあった。こうして今でも、その彼の身体からほとばしり続ける言葉を書き留め、それを一人でも多くの人に送り届けるという仕事に「加勢(かせ)」できることはぼくにとってこの上ない歓びだ。…中略… 辻信一 本書増補熟成版への「あとがき」より 本書は、水俣病問題を扱った本ではない。水俣病を体験したひとりの人間の想いと行動から、人間の生き方を問う書である。漁師でありながら、いや、漁師であるがゆえに、“いのちの思想”を全身で養い、表現し続けた緒方正人。 ◉ 緒方正人(おがた・まさと) 『常世の舟を漕ぎて 熟成版』へのメッセージ→ ゆっくりweb ショップへ |